ソラマメの切除した根端を低酸素下におき、核小体の構造、特にDNAを含む構造の変化について調べた。低酸素処理は、根端を沸騰後冷却した蒸留水中に置くことによって行われた。光学顕微鏡下では、時間とともに、(1)核小体の構成成分の分離、(2)分散、(3)好銀性紐状構造の出現、そして(4)完全な消失へと変化してゆくことが分かった。電顕観察によると、繊維中心(FC)が次第に発達し、その内部に大きな顆粒(35nm顆粒)が出現する。これと並行して核膜や染色質などが崩壊・分散した抗DNA抗体を用いてイムノゴールド法で調べると、コントロールでは、FC周辺の繊維成分(DFC)には広くラベルがみられた。一方、低酸素下では、DFCで著しくラベルが減少し、FC内に出現した染色質様の小塊に強いラベルがみられた。これは、切除根端を低酸素下に置くと、DFCで転写していたrDNAはその機能を停止し、FCそして染色体へと退いてゆくことを示唆している。 カイワレダイコンのヌクレオロネマには、太いセグメントと細いセグメントがみられた。分裂組織では主に太いセグメントのみられる核小体と細いセグメントが主にみられる核小体の両方が観察されたが、分裂組織から離れた分化細胞では細いセグメントのヌクレオロネマがよくみられた。Spurr樹脂で包埋した試料を超薄切片にし銀染色して調べたところ、ヌクレオロネマの切片像には、(1)棒状の断片が積み重なった構造、(2)球状の断片が2列に並んだ構造及び(3)リング状の断片がみられた。これらの構造を構成している棒状や球状の断片の幅や直径は平均約450nmであった。上述の3種類の切片像は「450nm幅のヌクレオロネマがコイルしている」と解釈するとうまく説明できる。このヌクレオロネマのコイル構造は、染色体のソレノイド構造を反映しているのかもしれない。細胞が分化して行くにつれてその構造が乱れて行くことが考えられる。
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