ウシガエルの精巣から精巣特異的タンパク質やプロタミンを採取する方法を検討した。対照としてウシガエルの肝臓、腎臓、脾臓、アフリカツメガエル精巣、ウシ胸腺を用いた。各臓器をアセトンで脱脂後直接0.25MHClで抽出あるいはタンパク質分解酵素阻害剤を含む生理食塩水中でホモゲナイズ、遠心を繰り返し粗クロマチンを調製し、常法により0.25NHClで塩基性タンパク質を抽出した。これらの標品をポリアクリルアミドゲル電気泳動(酢酸/尿素系、SDS系)により検定した。各臓器からは予想どうりヒストンが、またアフロカツメガエル精巣からはヒストンとともに多量のプロタミンが認められた。しかしウシガエル精巣からは所謂プロタミンに相当するバンドは検出できなかった。プロタミンよりも高分子側(ヒストンH1よりやや低分子側、分子量2万程度)に、対照としたウシガエルの精巣以外の臓器には見られない新規のバンドが認められた。これが精巣特異的タンパク質であるかプロタミンであるかは現在未定である。ウシガエルプロタミンが哺乳類型(すなわち、多数のCysによる架橋により網目状になり単なる酸抽出では抽出されない)の可能性を考えて還元/アルキル化後抽出を試みた。しかしこの方法でも新たなバンドは認められなかった。したがってウシガエルにおいては、少なくともプロタミンはこれまで知られているものとはかなり異なっていることが示唆された。カラムクロマトグラフィーにより精製を試みているが、精巣特異的タンパク質あるいはウシガエルプロタミンと思われるタンパク質はたくさんのピークに分かれ、そのいずれもが電気泳動でほぼ同じ挙動をとった。その原因を追及中である。
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