研究概要 |
1.昼夜にわたって活動するコガネグモの4対の眼(前中眼、前側眼、後中眼および後側眼)の視細胞の応答は、視神経を介した遠心性ニューロンの情報により調節を受けており、恒常暗黒下では感度のサーカディアンリズムを示す。今回、夜行性のオニグモも、コガネグモ同様の感度のサーカディアンリズムを示す事を見いだした。脳-視神経または脳-視神経-眼からなるオニグモの分離標本の視神経から遠心性の活動電位を記録し調べた結果、オニグモの視神経遠心性ニューロンの活動は、脳光照射により抑制される事が明らかになった。この結果は、オニグモの脳内にも光感受性のニューロンが存在する事を示しているが、コガネグモでは遠心性活動が脳光照射に伴い増加するのと比べ極めて対照的である。さらに、オニグモの視神経遠心性活動は照光照射中抑制され、光照射終了後に一時的に増加する事が明らかになった。この結果はコガネグモの場合と似ているが、コガネグモとオニグモの遠心性ニューロンでは、光刺激に対する応答特性に相違点が存在する事が示唆された。 2.クモ類の走光性は種の活動時の光環境と密接な関係を持っており、オニグモは明暗何れの背景下でも、眼に定常的に提示した点光源に対しては負の走行性を示す(Nakamura and Yamashita,1997)。今回、オニグモは12L:12Dの明期終了後に顕著な正の走光性を示す場合を観察した。オニグモの視細胞感度のサーカディアンリズムも12L:12Dに同調する事から、遠心性ニューロンの活動は12時間の明期終了後(自然環境下では夕方から夜にかけて)顕著に増加する事が予想される。この結果は遠心性ニューロンの活動が走行性に関与しているという我々の考えを支持している。
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