コオロギの産卵行動の日周リズムとその発達経過、及び産卵発現機構の解析をおこなうことによって、昆虫一般の産卵行動発現のメカニズムのモデルを確立するのが、この研究全体の目的である。本年度は、まず産卵行動の連続記録をおこなうための測定機器の開発が目標であった。ゾウリムシやショウジョウバエなどの小動物の活動量測定用に設計されたセンサーアンプとコンピュータ解析プログラムを用いることにしたが、産卵のための基質(本来は湿った土や砂)と、その基質を利用して産卵を記録するセンサーの選定に時間を費やした。結局、適当な濃度のゼラチンと砂とを層状に配置し、透明なゼラチンを通過する産卵管を赤外線通過記録センサーで記録することにした。コオロギは個体ごとにアクリル製の小部屋に入れられ、その底の1カ所にはめ込まれた交換可能な産卵基質が入ったアクリル製小箱に産卵する。産卵管が差し込まれた回数が記録され、コンピュータで活動量記録(アクトグラム)として解析される。この産卵記録装置とセンサーアンプの設計は、(株)国際電子工業の協力でおこなわれた。この記録方法の利点は、実際に卵が生み出されなくても産卵活動として記録できる点にあり、卵巣が未成熟な個体や、卵巣除去をした個体で、産卵行動よれ自体の有無を調査できる。 現在のところ、まだ一度に記録できるのが6個体と少ないので、基準となる正常な雌での十分なデータを集めつつある段階であるが、飼育条件27℃、明:暗=12:12時間のもとでは、明期の後半と暗期の前半に産卵活動のピークがくる傾向があることがわかってきた。
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