研究概要 |
昨年度考案・作成した装置を改良し,18個体(昨年度は6個体)のコオロギから産卵行動と歩行活動を同時記録できるようにし,この2つの行動の羽化後の発達と交尾による変化を解析した。また卵巣除去手術の影響も実験した。飼育および実験は,27℃,明:暗=12:12時間の条件下で行った. 1.羽化直後に交尾を行った雌と未交尾雌との比較(1)産卵行動:産卵行動の開始は,両グループとも平均第4日目で,これは卵巣に成熟卵が現れる時期に一致している。しかし実際に卵が生み出されるのは,交尾した雌では4日目であったが,未交尾雌では個体差が大きく,平均15日目であった。産卵行動の頻度および産卵数は,交尾した雌の方が圧倒的に多かった。交尾した雌の産卵行動の日周リズムは,明期の終わりから暗期の前半にかけて大きなピークがあり,また個体により明期前半にも小さなピークが見られた。未交尾の雌では個体差が非常に大きく,また頻度も低いためはっきりしたリズムが見られなかった。(2)歩行活動:いずれのグループも暗期の活動が明期より高いが,特に未交尾の場合,暗期開始から3-5時間後に活動が集中していた。交尾した雌でも,3週目頃から産卵行動の低下とともに歩行活動が未交尾型になる個体が見られた。 2.羽化後6-8日目に交尾させた雌の場合:交尾前には産卵行動・歩行活動は未交尾型であるが,交尾直後から交尾型に変わった。この二つの活動が交尾を契機として切り替わることが確認された。 3.卵巣除去手術の影響:羽化第1日目に卵巣を除去し,8日目に交尾させた。交尾前は未交尾型の活動を示し,交尾によって交尾型に切り替わった。ただし,産卵行動の頻度は正常な雌に比べてやや低かった。これにより,卵巣の有無にかかわらず交尾による産卵行動と歩行活動の切り替えが行われることが明らかになった。
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