研究課題/領域番号 |
07640916
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | (財)東京都老人総合研究所 |
研究代表者 |
米沢 由美子 東京都老人総合研究所, 実験生物学部門, 研究助手 (00201864)
|
研究分担者 |
近藤 昊 東京都老人総合研究所, 実験生物学部門, 研究員 (80073013)
|
キーワード | R-SGF(rat serum growth factor) / ラット血清性細胞増殖因子 / 分離精製 / 無限寿命化細胞 / 肝発癌剤 / 血小板 / 血漿への遊離 |
研究概要 |
R-SGF(rat serum growth factor、ラット血清性細胞増殖因子)は、我々がラット血清から精製した新種のヘパリン結合性細胞増殖因子である。その物理化学的性質や作用発現の細胞特異性は既に報告した。本年度は昨年に引き続き、アミノ酸組成を決定するための大量精製を試みた。7年度の補助金から92万円で購入したラット血清約1800mlと、他に集めた200mlの計2リットルから出発した。前々回の試みでは、100mlの血清から小規模のクロマトグラフィーを繰返し精製に成功した(SDS-PAGEで単一バンドになった)が、今回はスケールアップによるデメリットが強く現れた。即ち血清中の他の大量の蛋白による妨害や、使用しているHPLCの不備(旧式の分析用なので分取に不適)等のため、極めて微量な(血清濃度は多くて数ng/mlと予想される)この因子の精製は困難を極めている。特に回収率が予定の1/2-1/3と低いので、シークエンス決定に必要な最低量(2μg程度)を得るため、本年度は補助金の殆どを血清購入に費やした(51.5万円)。現在はこれら血清からの精製の最終段階である。 昨年報告したようにR-SGFは無限寿命化した細胞に特異的に高い増殖活性を示すので、ラット生体での癌発症に関わっている可能性が考えられる。そこで今回、5週齢ウイスター雄ラットに、肝発癌剤である3'MDAB(3'-methyl-4-dimethylamino azoben zene)を12週間投与し、血漿中のR-SGF量を調べた。この因子は正常時は血小板に局在しており、血漿中には全く存在しない。投与2週目から4週にかけて血漿R-SGF量は著しく増加し、やがて減少した。が、癌死直前に再び増加した。R-SGFは、発癌剤投与により血小板から遊離され、その後、発癌剤で変異した細胞の増殖を促進すると考えられ、この実験結果は、R-SGFがラット生体内でプロモーターとして作用するという我々の仮説を支持していると思われる。
|