研究概要 |
北海道オホーツク海沿岸,北海道南部,新潟県沿岸および石川県・福井県の沿岸において調査を行いカジカ科魚類23種約300個体を採集するとともに,各地の水産試験場等で資料調査を行った.これらの標本と北海道大学水産学部に所蔵されている標本を基に分類学的な解析を行い、現在までに以下の新たな知見を得た。 1.北海道網走沖のオホーツク海から採集された3個体を基に新種オホーチクソコカジカZesticelus ochotensisを記載した。本種は大きな頸棘を持ち頭部背面の感覚孔が発達する点で本属の既知種とは異なる。 2.北海道のオホーツク海沿岸および北海道南部での採集調査において、ヤセカジカ属Radulinopsisの1未記載種と日本初記録種Radulinopsis derjaviniを得た。未記載種は体が鱗を被らないことで本属の既知種とは異なる。また、本属は東部北太平洋産のRadulinus属のシノニムとする見解もあるが、比較解剖学的解析により本属はホホウロコカジカ属Astrocottusを姉妹群とする属レベルとして有効な単系統群であることが判明した。 3.北海道のオホーツク海沿岸で採集された標本の中からコオリカジカ属Icelusの1未記載種を見出し、新種記載論文を投稿した。 4.北陸から北海道の日本海の浅海域から得られたホホウロコカジカ属Astrocottusの標本を形態学的に解析した結果、既知種とは若干異なる1型を見出し、現在アイソザイム解析なども含めてさらに詳細に解析中である。 5.クシカジカ属Stlengis 3種の比較解剖を行い分岐分類学的に解析した結果、ウロコカジカS.misakiaは他の2種のsynapomorphiesの一部を欠き、また独自のapomorphiesを持つことから、本属の多系統性が示唆された。
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