研究概要 |
北海道周辺を中心に採集調査を行うとともに、国立科学博物館、東京大学総合研究博物館および京都大学農学部に所蔵されているカジカ科魚類の標本調査を行った。得られた標本・資料と北海道大学水産学部に所蔵されている標本を基に分類学的な解析を行い、現在までに以下の新たな知見を得た。 1.北海道網走沖のオホーツク海から採集された31個体を基に新種チゴコオリカジカIcelus ecornisを記載した。本種は頭部背面の眼状棘および頸棘が未発達で側線鱗がきわめて微細な棘からなる鋸歯縁をともなうなど点で本属の既知種とは異なる。(Tsutsui & Yabe, 1996) 2.北海道のオホーツク海沿岸および北海道南部で得られたカジカ科の1未記載種はヤセカジカ属Radulinopsisにきわめて類似するが、ロシア科学アカデミー動物学研究所に所蔵されているヤセカジカ属の既知種2種の模式標本と比較した結果、未記載種は前鋤骨歯があること(plesiomorphy)、体側に鱗がないこと(apomorphy)などの点でヤセカジカ属の標徴とは異なり、未記載の属であることが判明した。 3.北海道南部沿岸で採集された標本に基づき、オシマオキカジカArtediellus neyeloviの稚仔魚の記載と形態形成に関する新知見についての論文をを投稿した。
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