哺乳動物各種の、白亜紀末から新生代初期にかけての適応放散の様子や分岐年代についてはなかなか研究が困難で、不明瞭な点が多かった。これを克服するには、DNA分子の塩基配列を調べ統計学的手法で系統関係を推定することである。食虫類のミトコンドリアDNAの塩基配列のデータは、哺乳動物の適応放散と系統分岐についての重要な手がかりを与えることになる。 現在、ヒミズ、モグラの全DNAおよびミトコンドリアDNAは抽出しているので、これを用いて、哺乳動物ヒト、コウモリ、スンクス、ヒミズ、モグラ、マウス間で比較できるミトコンドリアDNA部分領域をPCR法で増幅し塩基配列を決定して分岐年代を推定する実験を行っている。ミトコンドリア、シトクロムb遺伝子について比較できる307塩基(102個のアミノ酸)を決定して、アミノ酸配列になおした比較をおこなった。 得られたデータが少ないのでまだ定量的な考察はできないが、ヒト(霊長類)、ヒミズ・モグラ(食虫類)、マウス(齧歯類)間の種分化のあり方、年代的傾向は、これだけのデータだけでも示していることが伺えた。
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