1.ヨーロッパ産トノサマガエル群のカエル、イタリア産とルクセンブルグ産のRana lessonaeおよびトルコ産Rana ridibundaの間で作成した3組の正逆雑種、ならびに各対照区の雄から、それぞれ同一条件でMating callを採録し、分析した。その結果、雑種のMating callは、正逆の組み合わせにより大部分の音声成分が異なり、全音声成分のうち多くは雌親種のものに近い値を示したが、雑種特有のものも見られた。しかし、雄親種の音声成分に近いものは皆無であった。そのため、雑種のMating callは雌親種のものに似る傾向を示した。 2.ダルマガエル典型種族3集団、トウキョウダルマガエル7集団および分布域がその両亜種に挟まれているダルマガエルの名古屋種族7集団の各Mating callを比較した結果、典型種族は全てよく似た1音節構造を示し、トウキョウダルマガエルは全集団が類似した多音節構造を示したが、名古屋種族の鳴き声は、方向性を伴って変異し、分布が近い亜種のものにそれぞれ似る傾向が見られ、名古屋種族の亜種間雑種起源が示唆された。 3.鹿児島から青森に至る17集団のツチガエルのMating callを比較した結果、一鳴きの継続時間と構成パルス数に本州の長軸に沿った明瞭なクラインがみられ、両者とも南西から東北にいくほど値を増し、その両端に近い集団間ではそれぞれ5倍と4倍もの差があった。その差は、雌による識別テストから有効な隔離機構となり得ることなどがわかった。
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