研究概要 |
本研究では、異なる地域に生息するエラブウミヘビ属の複数の集団を形態・タンパク・遺伝子の3つの異なるレベルで、多型性と相同性について比較し、形態学的にみた種の境界と、タンパク・遺伝子レベルでの境界との関係を明らかにすることを目的とした。 エラブウミヘビ属のウミヘビLaticauda colubrinaとLaticauda laticaudata(各々Vanuatu, New Caledonia産)を生きたまま現地より輸入し即殺後直ちに毒腺を摘出し、液体窒素中で凍結し、個体別に-80℃で保存した。各個体の毒腺から全RNAを抽出し、これよりダイナビーズによりpoly(A)RNAを抽出した。このRNAを鋳型とし、5'側にClaI, BamHI, XhoIの切断部位をもつhybridprimerを使い逆転写酵素でcDNAを合成した。得られた1本鎖cDNAを鋳型とし、erabutoxinacDNAの5'末端の配列にHindIII, XbaIの配列を付加した5'側のプライマーと3'側のプライマーとの間をPCRにより増幅した。増幅断片(約500bp)を両端に付加した制限酵素切断部位を利用しHindIIIとBamHIで切断後、pUC119のHindIII・BamHI部位に挿入しクローニングした。得られたクローンから少なくとも10クローン以上を選択し、1つの個体から少なくとも2種以上の神経毒イソホームをコードするcDNAの塩基配列を決定した。産地および種の異なるヘビについて同様の実験を行った。 上記の実験で得られた神経毒のイソホームのcDNAの配列をパーソナルコンピュータで比較し、神経毒のイソホームの分類を行ったところ、L. laticaudataは産地に関係なく1つのクラスターを形成したが、L. colubrinaはVanuatuとNew Caledoniaで異なるクラスターを形成した。形態学的にもL. laticaudataは産地による違いが認められないが、L. colubrinaはNew Caledonia産とVanuatu産で縞模様の形や色など多くの違いが見られた。以上のことから、New Caledonia産のL. colubrinaはL. colubrinaではなく新しい種とするべきであるとの結論に達した。 hybridprimer 5'-ATCGATGGATCCTGCAGTTTTTTTTTTTTTTTTT-3' 5'側のプライマー 5'-TTAAGCTTCTAGACTCCAGAAAAGATCGCAAG-3' 3'側のプライマー 5'-AAGATATCGATGGATCCTCG-3'
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