研究概要 |
オーストラリア,ニューカレドニア,ニューギニアチリ等で収集ずみのモクレン目のバンレイシ科,ユ-ポマチア科,シキミモドキ科等,とクスノキ目のモニミア科等,全部で7科10属にわたる原始的被子植物の胚珠の発生について詳細なSEM観察を行った.棍棒状の胚珠原基が内側に曲がり始めた頃,その先端部近くから内珠皮がリング状に発生を開始した.これとほぼ同時かやや遅れて,外珠皮の発生が始まったが,これはリング状ではなく半円状に起こり,完成した外珠皮は幌状形態を示していた.切片による観察からも,珠柄の腹側には外珠皮は形成されないことが確認された.以上から,「倒生胚珠の内珠皮はコップ状を示すのに対して,外珠皮は幌状形態を示す」とする仮説がほぼ照明されたと考えられる.内珠皮のコップ状形態は,内珠皮がテロームの合着によって作られたとする説を支持するものと思われる.これに対して,外珠皮の幌状形態は,外珠皮が背腹性を示す葉的器官であることを強く示唆するものであり,シダ種子類のCaytoniaやGlossopteris類の杯状体や生殖葉が外珠皮に進化したとする説の妥当性が強まった.また調べた大半の種において,外珠皮よりも内珠皮の方がさかんに成長するため,内珠皮が突出しており,珠孔は内珠皮の孔であるendostomeによってのみ作られていた.これも原始的被子植物に共通にみられる特徴であることが示された.
|