研究概要 |
タナゴ亞科魚類の系統分類に用いる基礎的データの収集のために、特に中国からの採集標本と海外の博物館からの標本を中心に、分類学的に大きな混乱がある種の分類学的再検討を行った。今まで十分に行われなかった中国産の種からデータを収集できたことは今年度の大きな成果である。得られた結果を簡単に以下に示す。 1.中国産タナゴRhodeus sincnsisの地理的変異・体色斑に関する研究 英国自然史博物館に保管されている本種の基準標本と中国からの採集標本及び他の借用標本の比較検討を行った。比較に用いた形質は、外部形態、脊椎骨格系、体色斑等である。その結果、これまで混乱していた本種と近縁種とのsynonymyが整理された。 2.中国産タナゴAcheilognathus meridianusの分類学的再検討 中国科学院水生生物研究所から基準標本を借用し、外部形態、脊椎骨格系を中心とした比較検討を行った。その結果、現在中国では無視されていた本種の学名が有効であるということが判明したばかりではなく、本種と近縁種とのsynonymyが整理された。 3.ヤリタナゴTanakia lanceolataの分布に関する研究 これまで日本と朝鮮半島のみに分布すると考えられていた本種の分布を中国遼寧省から再発見した。本研究で得られた成果は日本魚類学会誌に投稿・発表した(Arai,Xie.and AKai,1995)。
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