研究概要 |
タナゴ亜科魚類の系統分類に用いる基礎的データの収集のために、分類学的に大きな混乱がある種の分類学的再検討を行った。また、日本産、中国産、朝鮮半島産を含むタナゴ亜科の比較解剖を行い、今まで殆ど行われなかった種間の類縁関係を示唆するデータを収集できたことは今年度の大きな成果である。得られた結果を簡単に以下に示す。 1.中国産タナゴRhodeus sinensisのシノニムの整理 英国自然史博物館から借用した本種の基準標本、中国産のRhodeus lighti,および朝鮮半島産のR.uyekiiの外部形態、脊椎骨、体色斑等の比較研究により、従来、中国の固有種と考えられていたR.lightiが、また、朝鮮半島の固有種と考えられていたR.uyekiiが、R.sinensisと同一種であり、命名の古さから、R.sinensisが本種の有効名であることが判明した(Akai and Arai,印刷中)。 2.中国産タナゴの未記載種について 中国産のAcheilognathus tabiro(=A.tabira)を日本産のA.tabiraと比較研究した結果、中国産のA.tabiroは未記載種であることが判明した。 3.タナゴ亜科の比較解剖について 日本産15種・亜種、中国産9種・亜種、朝鮮半島産1種、ヨーロッパ産1種の成魚を用いて、頭部感覚管および眼下骨の比較解剖を行い、頭部感覚管で9分析形質、眼下骨で6分析形質を識別することができた。バラタナゴ属では、幼魚の特徴を維持している種がみられることから、幼形成熟と種分化の関係が示唆された。
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