タナゴ亜科魚類の系統分類のために収集した日本産、中国産、韓国産の標本に基づき種のsynonymyを整理した。また、頭部感覚管の比較解剖に加え、個体発生、分子系統学的研究をすすめ、属内および属間の類縁関係の解明をはかった。 1.中国江蘇省から新種と思われる標本を発見し、未記載種の発表を投稿中である。 2. Tanakia lanceolataの個体発生の予備実験を行い、頭部感覚孔原基の形成は受精後50日前後から始まり、100日前後で感覚管が完成することが推定された。 3.頭部感覚管の配列、眼下骨の数、染色体数などを分析形質としてタナゴ亜科の系統樹を再構築した結果、Acheilognathus属の単系統性が確認された。 4.ミトコンドリアの12SrDNAの塩基配列に基づいて分子系統樹を構築した。最節約樹、最ゆう法および近隣結合法による系統樹はAcheilognathus属の単系統性を支持した。 5.日本と中国の研究者により意見の分かれていたPseudoperilampus属の模式種はAcheilognathus属に属することが種系統樹および分子系統樹で支持された。 6.中国産Tanakia lanceolataが日本産T.lanceolataと同じ種であることが分子系統樹で支持された。 7.タナゴ亜科の単系統性が種系統樹および分子系統樹で支持された。
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