研究概要 |
沖縄でボラ(主としてフウライボラ)20尾を解剖して,消化管に寄生する吸虫類を採取し標本を作製した.このほか本州,フィリピン,インドネシアのボラからの材料も加えて次の成果を得た. 1.ボラから得られた吸虫はWaretrematidae科のWaretrema piscicolum,Carassotrema属1種,Haploporidae科のDicrogaster属1種,Haploporus属2種,Lccithobotrys属1種,Haplosplanchinidae科のHymenocottamulli,Hemiuridae科のHysterolecitha属1種の合計8種である. 2.Waretrema piscicolumとHymenocotta mulliは日本からはじめての記録で,いずれもインド・太平洋のボラにひろく分布している. 3.Carassotrema属1種は新種でフィリピンのボラの腸から得られた. 4.Dicrogaster属1種は新種で本州のボラの腸から,Haploporus属2種はいずれも新種で沖縄とインドネシアのフウライボラの腸から得られた. 5.Lecithobotrys属1種は新種で沖縄とインドネシアのフウライボラの胃噴門部から得られた.本属吸虫はこれまでボラの腸からのみ記録されているが,胃から採取されたのははじめてである.本吸虫の腸の形態は,二岐するものから分岐しないで袋状を呈するものまであり,従来の腸の形態を重視した分類体系に疑問を抱かせる. 6.Hysterolecitha属1種は新種でインドネシアのボラの腸から得られた. これらの詳細については現在論文作成中で,近日中に学会誌に投稿(裏面参照)の予定である.
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