研究概要 |
1)平成7年6月24日から7月2日まで北海道で調査をおこない、多くの基礎資料を得た。特に,支笏湖周辺のカラマツ林に大発生している2種のマツヒラタハバチについては,多数の標本を採集し,いずれもこれまで北海道から記録のなかったニホンアカズヒラタハバチとカラマツヒラタハバチであることを確認した.ニホンアカズヒラタハバチの幼虫がカラマツを食することは,これまで知られていなかった.また,東シベリアから記載されたCephalcia baikalica Verzhutskiiがカラマツヒラタハバチの異名であることが分かった. 2)ベルリン大学動物学博物館およびバイエルン州立動物学博物館所蔵のタイプ標本を検した結果,ヨーロッパでトウヒの害虫として知られ,日本にも産する可能性があるCephalcia属数種の学名に誤りがあることが分かった.現在,ドイツ昆虫研究所の研究者と共同で,論文発表の準備を進めている. 3)次の内容の4論文を発表した。(1)Pamphilius itoi Shinoharaの寄主植物はこれまで未知であったが,ケヤマハンノキであることを飼育により確認した.(2)マツノイトカケハバチの分布記録を再検討し,韓国からの記録がすべて誤りであることを指摘した.また蔵王山から同種の変種として記載されたAcantholyda sasakiivar.semirufa Takeuchiを同種の異名とした.(3)ノボシビルスク動物学博物館所蔵のヒラタハバチ類標本を検した結果,Pamphilius sajanicus StroganovaがNaurotoma iridescens (Andre)の異名であること,StroganovaのいうPamphilius lucidus Rohwerがマツの害虫として知られるAcantholyda erythrocephala (Linnaeus)であることが判明した.(4)ヒラタハバチ科に近縁で,ハチ目の祖先的形質を最も多く残していると考えられるナギナタハバチ科のPleroneura属について東アジア産の種を再検討し,3新種を含む4種に整理した.
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