研究概要 |
1.斜里町知床博物館の協力により斜里町ウトロ神社山遺跡を発掘し、男性人骨1体を追加することができた。 2.東京大学文学部常呂実習施設保管の稚内市大岬遺跡出土人骨の調査を行なった。 3.頭蓋形態小変異22項目の頻度から四分相関係数を用いて生物学的距離を推定してみた。距離では,オホーツク文化人骨から近い集団として,サハリンアイヌ,バイカル新石器時代人骨,アムール集団であった。 4.アイヌとオホーツク文化の人々は、見た感じや頭蓋計測値の分析,四肢骨の比などは,たいへん対照的な群である。だが,頭蓋形態小変異でみてみると,二者は違うことはもちろんだが,アイヌと他の人類集団はさらに違っていることがわかった。 5.アイヌについては、北海道の中で脊稜山脈を挟む地域間での変異が大きい。これはアイヌの生活についての民族学的データや、遺伝子的なデータに見られる川筋を単位とした地域変異とは違った様相を見せる。アイヌの起源を縄文人とすると,縄文時代から近世までのアイヌ成立過程における外来要素の影響が無視出来ないが、遺伝的、文化的な要素がどの程度頭骨の形態変異に影響したのかはこれからの課題である。
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