本研究では、主にBi_2Sr_2CaCu_2O_yを試料として比熱、磁化といった熱力学量、及び関連する電気抵抗、磁束密度揺らぎスペクトル、ジョセフソンプラズマ共鳴の測定を行い、本物質における磁束融解一次相転移の熱力学量による直接検出と、相転移を挟む両相での磁束ダイナミクスを研究した。熱力学量の測定においては、磁化測定では融解転移点における磁化の跳びを観測することに成功し、酸素濃度の異なる試料の測定から一次相転移線が系の異方性に強く依存することを明らかにした。磁化と相補的な熱力学量である比熱に関しては、光加熱交流法による比熱測定を改良し、温度振幅4mKにおいて、相対感度0.1%を達成したものの、融解転移点での比熱異常は観測されず、測定限界以下であると見積もられた。 ダイナミクスの研究では、微少ホール素子を使った高感度局所磁化測定と電気抵抗測定を同時に行うことによって、磁束液体相においても電流電圧特性が非線型であり、磁束液体の粘性のため実効的ピン止めが無視できなくなっていることを明らかにした。また、電圧をFFT解析することによって磁束密度の揺らぎのスペクトルを測定する全く新しい手法を開発し、磁束がローレンツ力によって動き出す時に塑性変形を伴って運動することにより、大きな密度の揺らぎが発生することを見出した。この密度揺らぎは低電流下では磁束液体相でも観測され、磁束液体相での実効的ピン止めの傍証となっている。さらに、ジョセフソンプラズマ共鳴による磁束の面間位相相関の研究をおこなった。これら多数の測定手法が開発されたことも本研究の成果の一つであり、今後、他の様々な研究に応用できると考えている。
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