研究概要 |
平成7年度は、本研究計画通り、光源に回転対陰極形の強力X線源を使った「超高真空表面X線回析装置」を完成した。 そして、試料台に「膜厚計付き3軸回転高温ゴニオヘッド」(購入設備備品)を取り付け、蒸着ポートを設計し超高真空散乱槽に計画通り取り付けた。 この装置を使って、小角X線散乱による結晶成長表面の研究を開始した。 本研究の目的の一つは、実験室規模の限られた強度のX線光源を使った小角X線散乱において、表面の構造変化に最も敏感な量(或は複数のデータから導かれる量)を見いだすことであったが、まず、強力X線源からの入射X線(Cu-Kα線)を超高真空散乱チェンバー内の高温試料ホルダーに配置されたKCl単結晶清浄表面に微小角で照射し、小角散乱したX線の強度分布を測定した。この結果、入射角0.1°,0.25°において鏡面反射したX線の強度は100-200CPS観測され、回転対陰極形の強力X線源を使ったこの装置でも十分表面の構造解析の実験が可能なことが分かった。また、この実験を進めて、KCl単結晶清浄表面の表面ラフネスの結晶温度依存を、小角散乱したX線の強度分布により解析した。 また、この装置を使って、超高真空中での多結晶銀表面の表面荒さを微小角X線散乱によって評価した。散乱X線の散乱角分布は入射角の2倍の角度にピークを持つ(鏡面反射)が、ピークの形状は鋭くなく、広がりを持つ。この広がりから多結晶銀表面の表面荒さと結晶粒表面の傾き分布を解析した。 現在、比較的低温で準備できるSnTe(100)の単結晶表面を真空蒸着によって準備し、真空中のこれらの表面にX線を微小角で照射し小角X線散乱による結晶成長表面の研究をする準備を進めている。
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