研究概要 |
平成7年度はまずはじめに、PPy膜の電解重合中の成長過程を、我々の研究室で構築したCCD顕微鏡システムを用いて観察した。そして観察の結果、エタノール溶液中における良好な製膜条件を見出した。PPy単独膜及びPPy/PVA複合膜の電気化学的特性の評価を行った。具体的には、密度勾配管及び、申請した説備品費にて購入したソースメジャーユニットを用いて、ド-ピング/脱ド-ピングの繰り返し回数の増加に伴う膜の密度、及び導電率を測定した。導電率は膜を作成後、空気中にて四探針法にて行った。その結果、PPy単独膜繰り返しの電圧印加に伴い、膜の密度は1.328から1.520まで上昇することが明らかになった。また同時に、膜の導電率は低下することがわかった。顕微鏡を用いた観察と、この密度測定及び導電率測定から、劣化が繰り返しの電圧印加による膜の収縮に起因する、という我々の仮説を強く裏付ける有力な証拠を得ることが出来た。(謝、平井、池崎、"ポリピロール膜のエレクトロクロミズム現象び劣化機構(2)"、第56回応用物理学会学術講演会講演予稿集Vol.3 28a-R-5,1995) 一方、我々の研究室で作成したPPy/PVA複合膜の方はPPy単独膜に比較して密度、及び導電率は究めて安定していた。そこで、ITO基板上に作製したこの複合膜を用いて、固体型のECDを試作した。その結果、10万回以上のド-ピング/脱ド-ピングの繰り返しに耐え、ディスプレーとして実用化の可能性が高いことが初めて示された。(平井、謝、池崎、"Ppy/PVA複合膜を用いた固体型エレクトロクロミック表示素子"、第56回応用物理学会学術講演会講演予稿集Vol.3 28a-R-6,1995)上述の結果から、当研究室で考察したPPy/PVA複合膜は、多孔性のポリマーがこうしたPPy膜の収縮を機械的に妨げる役割を果たしていることは容易に推察できるが、(1)複合膜をからPVA層を除去したPPy膜の耐久性はPPy単独膜よりもはるかに長いこと、(2)しかもPPy単独膜に後からPVA層を接合した試料は色変化を示すものの耐久性に劣る、という二つの実験事実から、成長した膜の高次構造、微細構造自体がエレクトロクロミズム現象の劣化を大きく左右するものと考えられる。
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