研究概要 |
1.Cuのらせん状ひげ結晶を試料として、その表面構造をAFM,SEMなどを用いて観察、測定し、さらに完全性についての評価を行った。まず、らせん状ひげ結晶の表面に、原料ハライドCuIの{111}面三角格子像を見いだし、少なくとも二次成長(太さの方向の成長)については、直線状のひげ結晶と同様な機構によって成長することを示した。 2.次いで、一本のらせん状ひげ結晶中の隣り合った“腕"同士が二次成長によって接触し、生じた段差が成長ステップとして働くこと、らせん状ひげ結晶の表面に腐食孔がほどんど存在しないことを見いだし、らせん状ひげ結晶も通常の直線状のものと同様に完全性の高い単結晶であって、本発明の試料として適切であることを示した。 3.測定対象が極めて微細なため、従来の引っ張り試験装置は使用し難い。本研究の成果を挙げるためにマイクロ結晶用引っ張りの試験装置を新たに設計し、使用に耐えるものを得た。 4.上記試験装置によってひげ結晶の応力歪特性について測定を開始した。細いCuひげ結晶に張力を加えたときの応答については、従来、高い強度を示す弾性領域(I)に低応力の塑性変形領域(III)が続き、さらに加工硬化領域(IV)に至るとされてきたが、今回(I)と(III)の間に若干の塑性変形を伴いつつ、よりさらに高い応力を示す、新たな領域(II)が見いだされた。 5.新たな領域(II)まで延伸し、高い応力Aに耐えたひげ結晶からいったん外力を除去し、再度延伸を行うと、弾性領域が拡張され、塑性変形を伴わずに応力Aに耐えた。 6.領域(II)は大きな塑性変形を伴わず、はるかに大きな応力を示すなど、加工硬化領域(IV)とは明らかに区別できる。この領域の生ずる機構については考察中である。
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