以下のことが判明した. 1.らせん状の銅ひげ結晶は、直線状のひげ結晶と同様に完全結晶に近く、かつ高い抗張力を示す.ただし、その応力―歪特性は直線状のものと大きく異なり、容易滑り領域(領域 II)を示さない.弾性領域(領域 I)から、応力集中による微少ではあるが極度に塑性変形する部分がひが結晶内に周期的かつ離散的発生する領域 I'、さらに塑性変形部分が拡大する領域 III'と移行する. 2.小生等が行なってきた量産法による銅ひげ結晶、後述する食塩ひげ結晶も従来のものと同等の強度を示した. 3.これらの特性を調べるために、応力による延伸速度の変化が少ない、微少飼料用の引張試験機を作成し、ひげ結晶延伸時の応力特性と電気抵抗変化の同時測定、上記の成果等満足する結果が得られた.また、nmサイズの極微ひげ結晶に対するAFM下の引張り試験につき予備実験を行った. 4.表面張力の下で、表面に存在する液層が原料の通路となるひげ結晶の成長機構を提起し、水溶液からのアルカリハライド等ひげ結晶ならびにCVDによる金属のひげ結晶の成長に適合することを成長実験ならびに計算機実験とあわせて示した.前者の表面液層は水溶液、後者のそれは原料ハライド液である. 5.前項と関連して、ひげ結晶の新しい製法として表面張力の効果を促進する異種粒子の使用によるアルカリハライド等水溶液物質のひげ結晶、ならびに電子シャワー法によるITOひげ結晶の2方法を見出した. 6.AFM観察によれば、CVD成長した銅ひげ結晶の側面は界面エネルギーの少ないエピタキシャルあるいはCSL関系により原料ハライドの{ III }薄膜によって覆われている. 7.分子動力学計算によれば、成長中のひげ結晶の側面とハライド液層の間にすでに原料ハライドの高温相{ III }薄膜が存在しており、ひげ結晶側面の面方位を制御している.冷却後のひげ結晶では熱膨張係数の相違により張力を生じている.
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