研究概要 |
分子科学研究所の極端紫外光施設にあるシンクロトロン放射光(BL-8A,BL-4A白色光)を光源として使用し,DMZn,DETe等の有機金属を原料とした光励起原子層成長を主にGaAs(100)基板を用いて実施した。成長実験は,現有装置を一部改良し,原料ガス供給時の成長室圧力を10^<-5>Torr程度として交互供給方式で原料供給量,原料供給,放射光照射の時系列等の成長条件を変えて行った。以前実施した同時供給法の場合と同様に,交互供給法によっても室温でエピタキシャル層が得られ、炭素による汚染は認められなかった。表面段差計やRHEEDによる測定によると,成長層はマクロ的にもミクロ的にも平坦性の良い表面状態が得られ,膜厚の均一性の点では大幅に改善されることが判明した。また,成長速度の大きさから,1原子層単位で成長を制御できることを示し,詳細な実験により放射光により原子層成長が達成できる成長条件を明らかにできた。基板の違いについて,GaAs(100)とZnTe(100)とを比較した。いずれも原子層成長が達成できるが、RHEEDパターンで見る限り,ZnTe(100)基板の方がよりストリークであり,表面状態がより良好であることが分かった。 次に,主にGaAs(100)基板を用いて成長初期の吸着種について,XPS,TPDを用いて知見を得ようとした。DMZn,DETe双方ともGaAs(100)Terich表面に解離吸着すること,放射光照射によりハイドロカーボンの脱離が促進されること,1原子層程度の吸着層であること等を明らかにし,原子層成長メカニズムを理解する上でに有用な情報が得られた。 以上の結果から,シンクロトロン放射光の結晶成長への利用が結晶成長のみならず,反応生成物の脱離促進の観点から有用であることが明らかにできた。
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