まず、昨年度製作した散漫LEED像の撮影システムの性能評価と、今回解析に利用した自動追尾テンソルLEED法の動作確認を行うために、Cu(100)清浄面とCu(100)√2x2√2-R45°-O構造のI-V曲線を測定し、Cu(100)清浄面に対して構造解析を行った。本研究で得られたI-V曲線と過去の文献のそれとはよい一致を示した。このことから、本研究の測定システムは十分信頼性の高いものであることがわかった。次に、Cu(100)清浄面から測定されたI-V曲線に基づいてこの表面構造の解析を自動追尾テンソルLEED法で行った。そして、Cu(100)清浄面が理想表面の構造とほぼ同じであるという結果を得た。 次に、無秩序なCu(100)pseudo-c(2x2)-Oの散漫LEED像を撮影システムを用いて測定した。測定を低温(110K)で行い、全体の散漫散乱成分から逆格子平面の各点で清浄表面の散漫散乱成分を引くことによって、表面原子の格子振動による散乱波等の影響を除去した。また、試行錯誤法によって散乱強度を求める際の内部の強度を積分するための窓の一辺は、基本ベクトルの1/2では大きすぎて、1/3程度以内にすべきであることがわかった。さらに、吸着原子とその周りの原子構造からの整数次の回折点強度を求めるために、周辺の散漫散乱成分を平均して整数次のビームのI-V曲線を求めた。これらを用いて、Cu(100)pseudo-c(2x2)-Oからの散漫LEED像のI-V曲線を高精度で得ることに成功した。
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