散漫LEED像の強度分布を測定するためのシステムを構築した。具体的には、4枚グリッド型に既存のLEED装置を利用して、蛍光スクリーンに映し出されたLEED像を、超高真空装置のビューポートを通じて、今回導入した冷却CCDカメラシステムで撮影するというものである。まず、CCDを冷却してデバイスより生ずるバックグラウンドノイズを低く抑えた結果、無秩序表面構造からの微弱な散漫散乱光を、充分なS/N比で検出できることを確認した。また、露出時間を短縮することにより、散漫散乱光よりも5桁以上明るいブラック回折点の強度も、同一システムで測定できることも明らかとなった。実効的ダイナミックレンジは8桁であり、さらに、この範囲での実際の回折強度とカメラからの出力値との直線性が確認され、散漫LEED像の散漫散乱光やブラック回折点を含むすべての構造の強度を、同一の基準で測定できることが確かめられた。 次に、無秩序なCu(100)pseudo-c(2×2)-Oの散漫LEED像を撮影システムを用いて測定した。測定を低温(110K)で行い、全体の散漫散乱成分から逆格子平面の各点で清浄表面の散漫散乱成分を引くことによって、表面原子の格子振動による散乱波等の影響を除去した。また、試行錯誤法によって散乱強度を求める際の内部の強度を積分するための窓の一辺は、基本ベクトルの1/2では大きすぎて、1/3程度以内にすべきであることがわかった。さらに、吸着原子とその周りの原子構造からの整数次の回折点強度を求めるために、周辺の散漫散乱成分を平均して整数次のビームのI-V曲線を求めた。これらを用いて、Cu(100)pseudo-c(2x2)-Oからの散漫LEED像のI-V曲線を高精度で得ることに成功した。
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