研究概要 |
本研究は本年度補正予算で採択された。それが関係して、研究には時間的余裕がなかったが、以前見いだした吸着種のXPS信号の時間的な変化について、組織的な研究を始めることができた。すなわち、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAH)をSiO_2上の吸着種にAlKα線(1478eV)を照射すると、AlのXPS信号のピークが時間的にシフトすることと、それに合わせて、C信号の強度が減少することを確認した。さらに、基板温度を上げると、これらの変化が早くなることを観測した。分子研のUVSORを照射しても、同様な変化が観測された。さらに、基板依存性についても結果が得られた。すなわち、SiO_2に加えて、Si,Ti,TiO_2,TiN及びその酸化膜、Pd上でのDMAHの吸着種に対しては、AlKα照射の効果は認められなかった。 吸着種のX線による分解の機構については、直接光分解と二次電子による間接的分解の二種類が考えられる。そこで、SiO_2基板から放出される二次電子のエネルギー分布をXPSで観測した。その結果、20eVあたりにピークを持つ分布が観測された。これは吸着種を電子で分解するのに好都合であることを示唆している。しかし、二次電子による間接的分解とはまだ断定できない。正式な研究が始まるのが遅くなったため、これは本年度中には解明できなかった。SiO_2表面がなぜ特異なのかも解明される必要がある。これら機構解明の問題は次年度の最重要研究課題となっている。
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