研究概要 |
解離散乱過程に現れる分子配向依存性 並進エネルギーが大きく(100eV程度)なると、水素分子は金属表面での散乱過程で解離する。RechtienらはH_2/Cu系で、van SlootenらはH_2/Ag系で水素分子が解離して散乱される確率を測定し、それぞれ分子配向が表面平行の場合、表面垂直の場合に大きな確率を見出している。この解離散乱過程に分子軸配向依存性の現れる原因を調べた。 水素分子の結合性軌道を占める2電子(水素分子の電子系の始状態:^1Σ_g)の中の1電子が金属表面に遷移し、金属表面から1電子が水素分子の反結合性軌道に遷移する(水素分子の電子系の終状態:^3Σ_u,2個の中性水素原子に解離する)。このような水素分子の結合性軌道(反結合性軌道)と金属伝導電子の軌道間の電子遷移行列要素は、 (〕.SU.〔) と表される。ここで、rは水素分子の核間距離、θは分子軸と表面のなす角度(表面垂直方向から測る。),V_0u(Z)は分子の表面からの距離Z依存性を持つ分子の軌道と金属表面間の電子遷移行列要素である。(簡単のため計算では、V_0u(Z)に対して指数関数型のZ依存性を仮定した。)この行列要素の形から推測できるが、解離散乱確率にθ依存性と電子遷移に関与する伝導電子の波数k依存性が現れる。その結果、上述の電子遷移過程を考慮した計算値には、金属のバンド幅により、分子軸を表面平行にした入射分子の解離散乱確率が大きくなる場合、分子軸を表面垂直にした入射分子の解離散乱確率が大きくなる場合などが存在しうることが見出された。
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