平成7年度の設備備品費で購入した標準光源装置と現有のパーソナルコンピュータを組み込んだ色評価観察実験装置を用いて、6名の被験者において、色票とCRTの色刺激の色評価実験を遂行した。観察条件としては1)色票、2)CRT灰色背景、3)CRT黒背景、の3種である。1)と2)は物体色モード(表面色モードともいう)で、3)は光源色モード(開口色モードともいう)の見えである。 色評価実験は同一のテスト刺激に対して2種行った。第1は反対色型色相評価で、ディジタイザー上に赤、黄、緑、青の4つのユニーク色を90°ごとに配置した反対色型色相環を張り付け、その円周上の位置で刺激の色相を評価した。第2はカテゴリカルカラーネ-ミングで、テスト刺激の色を赤、橙、ピンク、黄、緑、青、紫、茶、白、黒、灰、の11個のカテゴリカル基本色名の1つで表すものである。色票は92色(平均輝度68.6cd/m^2)、CRTは灰色背景と黒背景各々56色(平均輝度31.9cd/m^2)のテスト刺激に対して、各被験者で6セッションずつ色評価実験を行った。 各測定点での色相評価をもとにユニーク色と二色均衡色の等色相線を描いた。その結果、どの被験者においてもユニーク黄の等色相線は色票、CRT灰色背景、CRT黒背景の3種の観察条件で良く一致していた。その等の等色相線についてはどの被験者においても、観察条件によりシフトが見られた。ユニーク赤は色票、CRT灰色背景、CRT黒背景の順で色度図の下方へシフトし、湾曲方向の変化を示す被験者もあった。これらの結果は先行研究の結果と一致している。ただし先行研究では、光源色モードか物体色モードかの実験しか行っておらず、従って被験者も異なるので、各々の結果の相違の原因が明確ではなかった。本研究においては、同じ被験者群、同じ手法を用いて、見えのモードのみを変えて実験を行った。従ってユニーク赤をはじめとする等色相線のシフトは見えのモードの相違に起因すると考えられる。また、カテゴリカル色名領域は被験者によりやや異なるが、それらの境界線の色相は被験者内および被験者間でほぼ一致しており、色覚メカニズムにおいて反対色過程より高次レベルでカテゴリカル色判断がなされていることを示す生理学的研究知見を支持する結果となった。
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