光閉じ込め系における光-原子相互作用を取り扱う通常のcavity quantum electro-dynamicsにおいては、cavityの損失は外部結合損も含めて減衰定数を導入して考慮される。そのためcavity内外の光の場の分布は考慮されず、cavity内外での伝播効果も無視される。本研究においては、これらの点を改善するため、cavity内外にわたる全空間で定義された電磁場のモード群を考え、原子はこれらのモード群と相互作用するものとして自然放出過程を解析した。初期に原子は励起状態にあり、場は真空状態にあるものとしてcavity内外の可観測場の強度をシュレディンガー描像で時間の関数として計算した。結果は原子の上準位確率振幅に対する遅延微分方程式の解に基いて、その解を共振器内伝播時間の整数倍遅らせ、かつ共振器端反射率を乗じた諸項の和を用いて表現された。視察によりこれよりパワースペクトルを求めると、上準位確率振幅の時間発展のフーリエ変換をおよびcavity構造に基く電気的感受率(空間的グリーン関数)によって表されることが示された。前者のフーリエ変換は、Huangらにより古典的に導入された未知の電界振幅の量子力学的対応物である。 さらに、放出光のパワースペクトルを観測用原子の概念を用いて直接求めるために、鋭い周波数選択性をもつ観測原子の位置における放射場の表記をシュレディンガー、ハイゼンベルク描像を混用する方法、および専らハイゼンベルク描像を用いる方法を二法で求めた。その結果得られるパワースペクトルは、先に放射光強度から視察により求めたものと一致した。重要な点は、観測されるスペクトルは原子の時間発展のみでは記述されず、空間の感受率の効果を含むことである。
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