1.モデルの設定 通常のcavity quantum electrodynamicsを改良し、結合損失とcavity内外での伝播効果を取り入れるために、cavity内外にわたる全空間で定義された電磁場のモード群を考え、原子はこれらのモード群と相互作用するものとして自然放出過程を解析した。キャビティのモデルとして単一の誘電体板を取り、原子は二準位原子とした。双極子近似と回転波近似を仮定した。 2.一次元的解析 キャビティたる誘電体板に垂直な方向で充分大きい周期で周期境界条件を課して直交モード系を導出し、その規格定数が多重反射効果に対応するフーリエ展開をもつことを示した。自然放出過程をシュレディンガー方程式により非摂動的に解析し、放出過程を記述する遅延微分方程式を導出した。この方程式は鏡像効果(あるいは多重反射効果)を表わすものと解釈できる。これに基いて外部で観測されるスペクトルを得、さらにこれが原子双極子の時間発展と空間応答関数によって表現されることを示した。 3.三次元的解析 上記キャビティにつき三次元的周期境界条件を課して直交モード関数群を導出し、ハイゼンベルクの方程式を用い、系を零および一励起状態に限定することにより、自然放出過程を記述する遅延微分方程式を導出した。この方程式も鏡像効果(あるいは多重反射効果)を表わすものと解釈できる。マルコフ近似の下ではいわゆる自然放出増強率が得られた。 4.二原子発光 キャビティ内に二個の励起された原子があるときの自然放出過程をハイゼンベルクの方程式によって解析し、全空間の光子数の増大率を計算すると上記の一個の原子の減衰に帰着される項と、二原子の相互作用を表わす項とが現れる。後者の大きさを数値計算することにより原子間距離が平板マイクロキャビティの有効モード径を越えるとその値は小さくなることを示し、有効モード体積のひとつの意義を確認した。
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