本研究は電気光学効果を有する酸化物強誘電体で生じるフォトリフラクティブ(PR)非線形光学効果効果の超短光パルス応答に関して、結晶内で形成されるPR屈曲率格子のダイナミクスとその固定化について究明し時空間領域における超短光パルスの記録・再生や整形・直並列変換などの新規な光パルス情報処理法をホログラフィックな手法により実現することを目標に置いている。以下に得られた研究結果を列記する。 1.波長532nmの二つのピコ秒光パルスにより酸化物強誘電体チタン酸バリウム中に非線形屈折率格子が形成される時の電子、正孔、2つの不純物準位そして空間電場のピコ秒から秒の時間スケールでのダイナミクスを数値計算により究明し、シングルショット光パルス入射の場合には入射光パルスのfluenceに依存して空間電場ダイナミクスが定性的にも大きく変化することがわかった。また、マルチショット光パルス入射の場合には入射光パルス数の増加に伴い形成される空間電場が増大するが、その増加の割合は連続光入射に比べて緩やかであることがわかった。 2.ピコ秒YAGレーザ(波長532nm)と強誘導体チタン酸バリウムを用いたPR屈折率格子の書き込みを連続光(波長633nm)により読み出すことによりPR格子形成ダイナミクスの測定を行なった。その結果、シングルショット光パルス入射では用いた試料でのPR格子形成は観測されなかったがマルチパルスによるPR格子形成のダイナミクスを観測することが出来た。 3.連続光(波長514.5nm)によるPR屈折率格子の熱的な固定化とその結晶温度依存性の測定を行ない、イオン格子と再書き込みされたPR格子の回析効率への相対的な寄与について明らかにした。そして、屈折率格子固定化と回析効率増大化が両立する動作温度条件についての知見を得ることができた。さらに、格子固定化の要因となるイオンの活性化エネルギーを抽出する事が出来、室温での格子の寿命は約190日程度であることを見いだした。
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