バクテリオロドプシンはバクテリアの細胞膜から単離される色素タンパク質で、光強度だけでなく偏光方向によって異方性を生じるため、偏光ホログラム記録材料として知られている。光の強度(振幅)、位相だけでなく、偏光も情報として利用する、偏光制御型光スイッチ素子を実現するため、入力光の偏光をスイッチすることによって出力光の偏光あるいは強度を制御する方法を提案し、その動作確認を行った。 1.室温でのスイッチング動作の確認 4光波混合光学系で、書き込み光のArイオンレーザの偏光を半波長板を用いて縦・横に変化させ、信号光(He-Neレーザ)の偏波面を一定に保ったままで、出力光の偏光を変化させたところ、高いon/off比が得られた。しかし、そのスイッチング速度はミリ秒のオーダーで、生体材料自身のもつ高速応答性を十分利用するまでには至らなかった。 2.集光機能をもつスイッチ素子の検討 書き込み光であるArイオンレーザ光の一方に凸レンズを挿入し、平面波と球面波を干渉させ、バクテリオロドプシン薄膜上にボーンプレートのホログラムを書き込む。一方の偏光を直交させても、偏光ホログラムが記録される。これらによって信号光(He-Ne)を集光させ、30μmスポットサイズと円形の形状をもつ良好な集光特性を得た。集光させたまま偏光スイッチできるため、直接光ファイバーとの接続も可能となる。今後の課題は回折効率を向上させるためには、応答速度を遅くしなければならないという矛盾を解決することである。
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