研究概要 |
先端を尖らせた光ファイバあるいは金属の細線(チップ)を,光で照らされた物体に波長以下まで近付け,被写体の周辺を走査すると,光波の回折限界を超えた波長以下の空間分解能により被写体を観察することができる.また,先端を尖らせた光ファイバに光を入射すると先端近傍にエバネッセント光が生じ,この光を利用して近傍の微小粒子に力を及ぼすことができる.このような従来の光とは大きく異なる性質をもつエバネッセント光を利用した,光走査型トンネル顕微鏡(NSOM/PSTM),超高密度光ディスク,光マニピュレータ(光ピンセット)等の開発が行われている.この技術分野は,光散乱現象の近傍界を利用するため近視野光学あるいは近接場光学(Near Field Optics)と呼ばれている. 近視野光学の基本物理過程は,エバネッセント光の散乱問題+光波と光ファイバの結合問題と位置付けることができる.したがって,これまで誘電体光導波路不連続部散乱問題として開発された光導波路設計理論を近視野光学に適用できる可能性がある. 研究代表者らは,以前に誘電体光導波回路の設計基礎理論として,新しい形式の積分方程式(導波モード分離型積分方程式:Guided-Mode Extracted Integral Equations(略してGMEIE)と呼んでいる)に基づく境界要素法を提案した. 本研究では,新しい形式の積分方程式に基づく境界要素法を,2次元構造をした光走査型トンネル顕微鏡,光マニピュレータに適用し,シミュレータの作成を行った.作成したシミュレータにより光走査型トンネル顕微鏡,光マニピュレータの性質,物理現象等を調べた.研究代表者らが提案する新しい境界要素法の妥当性,計算精度を確認するため,エネルギー保存則,光学定理,相反定理等の物理法則を数値的に評価した.他の手法に比べ,本手法は高精度で解析可能であることを確認した.
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