研究概要 |
近視野光学の基本物理過程は,エバネッセント光の散乱問題+光波ファイバの結合問題と位置付けることができる.したがって,これまで誘電体光導波路不連続部散乱問題として開発された光導波路設計論を近視野光学に適用できる可能性がある.研究代表者らは,以前に誘電体光導波回路の設計基礎理論として,新しい形式の積分方程式(導波モード分離型積分方程式: Guided-Mode Extracted Integral Equations (略してGMEIE)と呼んでいる)に基づく境界要素法を提案した. 本研究では,新しい形式の積分方程式に基づく境界要素法を,2次元構造をした光走査型トンネル顕微鏡,光マニピュレータに適用し、以下のような成果を得た. (1)光ファイバの先端部に生じるエバネッセント光を利用した光マニュピレータについて、厳密な方程式である導波モード分離型積分方程式(Guided-Mode Extracted Integral Equations)を導出した。この方程式に基づく境界要素法を用いてシミュレータを作製し、光マニュピレータの精密な解析を行った。その結果、光マニュピレータについて、これまで全く知られていない様々な興味ある性質を明らかにし、光マニュピレータの物理的性質を直感的な理解に基づいて考えることはきわめて困難であることを示した。 (2)光走査型トンネル顕微鏡(Photon Scanning Tunneling Microscope)に対する導波モード分離型積分方程式を導出し、この方程式に基づく境界要素法を利用したシミュレータを作製した。さらに、作製したシシュレータを利用して、光走査型トンネル顕微鏡の物理的性質について詳しく調べ、光走査型トンネル顕微鏡についてのこれまでの直感的な理解が正確ではないことを明らかにした。新しい境界要素法の妥当性,計算精度を確認するため,エネルギー保存則,光学定理,相反定理等の物理法則を数値的に評価し、他の手法に比べ,本手法は高精度で解析可能であることを確認した.
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