研究概要 |
本研究者が提案した電気光学ランダム位相板は時間および空間コヒーレンスを制御することが可能な電気光学デバイスであり,レーザービーム照射による回折フリンジやスペックルを低減,制御できるものと期待される. 口径30mmという大口径の素子を厚さ0.5mmの電気光学結晶(LiTaO_3)を用いて試作し,直流,低周波,および高周波において動作確認実験を行った.試作においては,まず結晶上の解析により決定した数千個のランダムな領域に電極を形成し,その部分に直流高電圧を加えて結晶の分極を反転させた.これにより電圧を加えることによって位相差ができ,ランダム位相板が形成される.フレネル領域および遠視野でのビームプロファイルをCCDカメラを用いて精密測定した.試作素子では1.8kVを加えることによって半波長の位相差が引き起こされる。直流電圧においては通常のランダム位相板と同様の動作をすることが確認された.低周波交流電圧を加えることによってビームの平滑化がなされることが確認された.さらに高周波(3MHz)共振形の素子を試作し,実験によりビーム形状の変化を確認した。 動作は確認できたものの,予定していたビーム平坦度には至らなかった.これは素子が0.5mmと薄いため試作過程における熱処理などの歪みを受けやすく,また30mmとかなりの大口径であるためその影響が現れやすいためであった.結晶厚をさらに厚くしても,素子の動作原理上必要電圧が増大することはないので,より厚い結晶を用いる方がよいことが明らかになった.厚い結晶では素子容量も同時に低減されるのこの点でも有利であり,今後の開発が期待される.
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