研究概要 |
本中空伝送路のレーザー伝送は,矩型中空部内の平行に配置した2枚の金属反射板でレーザー光が反射を繰り返して行われる.伝送率は金属反射板のレーザー光に対する反射率に依存する.波長300nmより短波長の紫外エキシマレーザーに対して,反射率の高い金属はアルミニウム(Al)のみである.反射板としてAlを蒸着したリン青銅板が有効であることを前年度に明らかにしたが,長さ100cmの長尺反射板の製作が困難であった.今年度は,反射板製法の改善を図り,伝送率向上を目指した.リン青銅板研磨工程では,試作長尺用研磨機と手磨きを用いた,4段階の研磨により面精度の良好な長尺反射板が得られた.研磨後の洗浄工程では超音波洗浄,エタノール脱水,温風乾燥による非接触洗浄で,Alとリン青銅板の密着性を向上することができた.Al蒸着工程では,リング状ヒーターを試作し,その内側に長尺リン青銅板を配置することで,限られた空間の真空チャンバー内でもAl蒸着ができるようになった.この場合,Alの蒸着条件(蒸着速度,膜厚,基板温度)によって紫外光反射率,Alと燐青銅との密着性が異なるので,最適な作製条件を実験によって見い出した.試作の結果,Al蒸着リン青銅反射板の反射率は従来のAl反射板に比べて高くすることができた.Al蒸着リン青銅反射板を用いて,長さ100cmの中空伝送路を試作し,波長248nmのKrFレーザーの場合,77%の伝送率,110mJ/pulseの放射エネルギーが得られた.当初の目標である伝送率90%/mは達成できなかったが,伝送率向上の目処は得られた.これらの結果を基に,レーザーと中空伝送路との入射結合器,放射器(放射ビームの集光系)を設計・試作し,実用化できることを確認した.
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