平成7年度は計画を順調に遂行し、様々なコーンビーム型CT装置の構造や撮影条件での散乱線と再構成画像の関係を調べることが出来た。 まず、コーンビーム型三次元CTの試作機でのデータ収集をシミュレーションするモンテカルロプログラムを作成した。そのプログラムを用い、様々な条件下で検出器に入る散乱線を定量的に計算した。その結果、検出器に入射する散乱X線の量は当初予想した値より多く、被写体や照射条件に大きく依存することが分かった。特に、被写体中央部で散乱線の含有率が大きくなり、被写体厚が10cmでは、散乱線は直接線の2倍になった。 つぎにシミュレーションで計算した直接線および散乱線の強度分布を投影データとし、再構成画像への散乱線の影響を検討した。その結果、被写体の中心部では、多量の散乱線が検出器に入射するため、中央のCT値が下がるカッピング効果が起こることが分かった。厚さ10cmの被写体の中央のCT値は30%も低下した。 また、被写体透過後の直接線が一定となるフィルタを用いると、被写体中央部の直接線に対する散乱線の割合が低下し、画像全体でCT値が低下するものの、カッピング効果を抑制出来ることが分かった。 さらに、空間分解能を調べるための様々な形状の被写体を仮定し、再構成での像の歪みをシミュレーションした。 以上に結果から、散乱線の分布データを基にして、投影データや再構成画像データを画像処理し、散乱線によるCT値の減少やコントラストの低下を補正する、平成8年度に予定している劣化画像に対する画像処理アルゴリズムの開発に必要な多くの情報を集めることが出来た。
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