力バランス型原子間力顕微鏡としてシ-ソ-型レバ-を用いる装置を試作した。この装置を用いて、数種類の試料を対象に力距離曲線の測定を行い、力バランスの効果を確かめた。また、試料各点での力距離曲線を計測することで、試料表面の水膜の分布状況や表面の堅さを調べた。次にDC非接触モードで観察を行おうと試みたが、試料表面の水分子の影響、および自作したシ-ソ-型レバ-の熱的なドリフトが大きく、AFM像を得ることができなかった。 そこで、熱ドリフトが小さく、真空中での観察が簡単になると思われる新たな力バランス機構を考察し、簡単な装置を試作した。この装置の基本は通常のAFM装置でも採用されている光ファイバー干渉計である。ただし、光ファイバー端面に金を蒸着することで、端面とカンチレバ-間に静電力が働くようにした。原子間力によるレバ-のわたみは光ファイバー干渉計で読み取り、たわみに比例した電圧を光ファイバー端面にかけて、原子間力と静電力が釣り合うように制御する。制御状態では、カンチレバ-は全くたわまず、制御信号から原子間力を正確に検出できる。この機構では、上述のシ-ソ-型レバ-は必要なく、市販のAFM用カンチレバ-を使うことができるので、熱放出の効率がよくなり、ドリフトが小さくなると期待される。また、光ファイバー干渉計を使った超高真空用AFMは既に開発されており、若干の改造を行うだけで本方式が実現できる。 実際に簡単な装置を試作して、力バランス制御が行えることを確かめた。試作した装置の最小検出力は10^<-9>N程度であった。この値は主に装置の電気系に起因するものであり、現在その改良を行っている。この改良の後、真空中での観察を試みたい。
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