力バランス法を採用した原子間力顕微鏡を製作することで、DC非接触モードでの観察を可能にするシステムの製作を目指した。当初はシ-ソ-型レバ-による力フィードバック機構の導入を考えていたが、シ-ソ-型を採用することによるドリフトやレバ-の共振周波数の低さなどの問題が発生し、力を正確に計測することが困難であった。そこで、安定して非接触力を検出するために、通常のAFM用マイクロカンチレバ-を用いた力フィードバック機構を考えた。 この機構では、カンチレバ-のたわみを光ファイバー干渉計で検出することでドリフトのない構造になっている。また、市販のマイクロカンチレバ-は共振周波数が数10KHzと高いために、高速な試料走査が行える。力バランスのためのに、光ファイバー端面を金コートして導電性をもたせている。これとレバ-背面の金層に電圧をかけることで静電力を発生させ、試料探針間に作用する力と釣り合わせる。 この方法で実際に力曲線を測定したところ、レバ-たわみから力を求める従来の方法で得られるものとは異なる結果が得られた。とくに探針と試料が近づく場合の最大引力と遠ざかる場合の最大引力の差が小さく、より厳密な力曲線の計測が行えることが確かめられた。また、装置の安定度も以前のシ-ソ-型に比べ改善され、10^<-11>Nの力を検出することができた。ただ、力バランス機構の応答周波数は低いため、実際にAFM像を得るには至らなかった。 そこで、力バランス機構の制御方法を再検討し、高速な力検出を可能にする制御システムを考えた。そのために力場の中にあるレバ-先端の運動をモデル化し、レバ-挙動の伝達関数を求めた。つぎにPID制御を適用して高速な力検出を行うための制御パラメータを見積もった。計算では1KHz以上の周波数応答が得られている。今後は見積もった制御器を実際に製作し、非接触モードでの観察を行う予定である。
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