液体での表面波伝搬を広い周波数帯域で測定する手法にリプロンスペクトロスコピーがある。これにより、液体表面の動的物性は分子レベルから解明することができる。 本研究では、この手法を用いて海面活性剤水溶液の表面吸着層形成過程の解明を試みてきた。その結果、界面活性剤分子の吸着・脱離による分子の移動時間と表面波周期の相関から緩和現象を観測し、これを吸着と分子の拡散理論で説明することができた。今年度はこの発展として、新たな試料としてポリスチレンラテックスに注目した。これまでの海面活性剤と異なり、ラテックスは巨大粒子であり、バルク中で粒子が分散状態にあるコロイド分散系である。この粒子が表面張力にどうかかわってくるのかを解明することにした。10%以下のラテックス分散系での静的、動的表面張力の測定から以下の結果が得られた。 静的表面張力 表面張力の濃度依存性はきわめて低く、ほぼ水の値と一致した。 これより、ラテックス粒子は表面に存在していないものと考えられる。 動的表面張力 静的表面張力よりも値が僅かに低い。これは表面波の伝搬により、ラテックス粒子が表面に押し上げられたため表面張力が減少したものと思われる。また、1%付近で表面張力の減少ピークが見えた。これらは、表面波伝搬とラテックス粒子間の相互作用が関連しているものと思われる。 また、表面波の減衰か粘性は水よりも大きい事がわかったが、これについては今後更に高周波測定が可能である光散乱法について検討していくことが必要と思われる。
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