研究概要 |
真空蒸着により,500μm 幅,500μm 間隔の櫛形電極を作成し,数十%のブチルアルコールを混入したシリコーン油を作動流体として流動を観測した.その結果,500V 程度の印加電圧で流動が生じることが分かった.そこでさらに低電圧で動作させるためにIC製造用装置を用いてシリコンウエファ上に,20μm 幅,20μm 間隔の櫛形電極系を作成した。酸化膜により絶縁したウエハ上に、幅および間隔が 20μm のCr/Au 櫛形電極を形成し、それを覆うシリコン窒化膜に設けた窓により櫛フィンガーの片側半分のみを露出する構造とした。流動観測は、作動流体として第2ブチルアルコールを添加した超純水を用い、DC電圧印加時の電流と流動を、ピコアンメータ、金属顕微鏡、CCD カメラを組合せたシステムで行った。電流-電圧特性より、第2ブチルアルコールの濃度によらず、約0.8Vを境にオーム性伝導から非オーム性伝導へ変化し、1V印加時に約10nAの電流が流れることが分った。また、混合したアルミナ微粒子の動きによって、約3Vの電圧で予想した向きに方向性のある流動が観測できた。また、同じ駆動原理を応用した約1mm角のMicro Solar Boatを試作し、光による液体上の走行を確認できた。これは、ガリウムひ素チップ表面に太陽電池、裏面にイオン加速用櫛形電極を設けたものである。 また平面型の電極ではなく,15mmφ の円形金網電極を用いた円筒型のポンプを組み立てて実験を行った.イオン加速電極として電極の片面を絶縁したもの,及び全面を絶縁したものと裸の金網を重ねたものの2種について調べた。前者の構造を有し,電極間距離5mmで6段重ねたものに10kV印加したとき,予想した方向に約15mmの高さまでポンプアップすることができた.しかし,後者の構造では、予想とは逆の方向に前者より効率よくポンプアップされることがわかった。今後,さらに詳しく調べてこのメカニズムを解明する予定である。 マイクロポンプ
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