研究概要 |
本年度は加速電極の片側を絶縁被覆する代わりに,絶縁被覆した金属メッシュを補助電極として加速電極間に配置した新しい構造のポンプを考案し試作した。そして,流動実験を行った結果流動方向が予想とは逆になることがわかった。その原因としては補助電極にヘテロイオンによるイオンシースができ,そのイオンと加速電極の間に逆電界ができるためと考えられた。この現象を応用すれば純電気的に正・逆流(転)可能なイオンドラグポンプ(アクチュエータ)が実現可能と考えられる。実際に加速電極間に絶縁被覆した補助電極を設けた回転形イオンドラグモータを試作し,駆動実験を行ったところ補助電極の極性を反転させることにより,モータの回転方向を反転させることができた。 また,イオンドラッグポンプの更なるマイクロ化の基礎実験として、シリコンウエハ上にイオン加速用櫛形電極を試作し、流動観測を行った。試作は半導体微細加工技術を用いて行った。酸化膜により絶縁したウエハ上に、電極幅20μm・電極間隔20μm・横幅1.5mm・電極数250連のバリア層付き櫛形電極を形成した。バリア層に設けた窓により櫛フィンガーの片側半分のみを露出する構造である。3種類の作動流体(・純水100%、・1ブチルアルコール:純水=1:9、・ブチルアルコール:シリコーン油=1:1)を用い、DC電圧印加時の電流と流動を観測した。その結果、作動流体、すなわちブチルアルコール:シリコーン油=1:1の時、印加電圧約50Vで最大2.0mm/sの流動が観察され、他の作動流体の場合、同等以上の電流値になっても流動は起こらなかった。これは電極間の電界が弱い(<10⌒3V/cm)と、イオンの速度が遅いためであると考える。つまり、イオンの種類のみならず、作動流体の電気伝導度も重要な因子であることが分った。
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