研究概要 |
観測時系列データのカオス性に関する研究が最近盛んに行われている.従来,特に応用においては線形モデルが中心であった時系列データ処理に代わり,対象の非線形性の同定の重要性が認識されるようになってきた.線形系の場合,予測の基本として既に情報量基準が確立されているが,非線形系の場合には未だ提案されるに至っていない.不規則な時系列データ処理の統計モデルとは異なり,非線形ダイナミクスという観点から,ニューラルネットワークを用いて時系列データの非線形ダイナミクスをモデル化した.実際の現象を扱う場合には,人工的なカオスではなく,データのみから自己組織化(学習)を通して同定する必要性がある.このため,カオスの本質である非線形ダイナミクスをニューラルネットワークを用いて同定する.決定論的な予測のための基礎的な研究を基に,具体的な時系列データに応用して,検討した.時系列データをカオスとして捉えた場合,モデルを構築するためには埋め込み次元,遅れ時間などのパラメータを推定する必要がある.観測時系列データからダイナミクスを再構成するときに問題となるのが,埋込み次元の推定で,相関積分法などでは不安定な推定しかできないばかりか.ノイズがなくサンプル数が無限にある理想的な場合ですら相関次元の下限値が与えれているにしかすぎない.平成7年度では線形系に対する情報量基準を拡張した非線形情報量基準(一般化情報量基準)を導入し,続く平成8年度には時系列データとして経済指標,気温データなどいくつかの実データを用いて,決定論的非線形予測アルゴリズムと統計モデルによる予測法との比較検討を行い,決定論的予測法の優位性を確認した.
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