本研究においては、塑性変形に依って生ずる材料の微視組織変化が材料表面を伝搬する表面波の伝搬特性に与える影響を調べるとともに、提案している理論解析モデルによるシミュレーションを行い、その妥当性を検証した。すなわち、塑性変形下における5MHzの縦波および横波の伝搬速度変化を用いて材料の塑性異方性を表現する内部状態変数を決定し、この内部状態変数を用いて荷重方向およびそれと垂直な方向に伝搬する表面波速度のシミュレーションを行った。また、斜角用超音波探触子と超音波顕微鏡を用いて5MHzと200MHzの周波数における表面波伝搬速度を計測し理論解析結果と比較検討した。その結果、理論解析結果と実験結果との良好な一致は提案している解析モデルが塑性変形による表面波速度変化の解析に適用可能な妥当なモデルであることを示している。また、5および200MHzの実験結果より転位の影響を推定できることを示した。
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