研究概要 |
近年ナノ構造材料に関して多くの研究が行われ,この材料が高い弾性的性質,高降伏応力,超塑性などの力学的性質を有するばかりでなく,磁気特性などにも優れていることがわかってきた.しかし,その性能の発現のメカニズムはまだ未解明であり,それを明らかにすることは材料の作製,特性の予測などのために重要である.本研究の目的は,ナノ構造材料すなわちナノストラクチャ材料の力学的特性の発現機構を解明し、特性を予測することのできる理論を構築し、検証することにある。 本年度はまず、超微粒子複合材料およびナノストラクチャ材料の応力解析を行った。 はじめに、ナノスケール超微粒子を複合した材料を考え、界面の曲率(表面応力は曲率に関係する)を考慮して、変形・応力解析を行った。この解析は,本年度計上した経費で購入した高速なワークステーション(メインメモリ:128MB)を用いて行った.粒径が10nm以下のナノ微粒子を分散した複合材料の見かけの弾性率は、10nm以上の粒径で同じ含有率の材料のそれに対して、大きく異なってくることがわかった。また、微粒子を楕円体とし界面応力を考慮して粒子内部の応力分布を調べた。その結果、楕円体内部では界面の曲率変化の影響を受けて、内部応力は一様にならないことがわかった。さらに、5nm以下の粒径の場合には、外部に材料全体に引張応力が作用していても界面応力のために粒子内部に圧縮の応力が作用していることがわかった。マイクロメカニックスでは介在物内部の応力分布が一定であることを利用して、複合材料中の介在物を固有ひずみで置き換え、様々な複合材料の弾性定数テンソルを誘導することができた。しかし、界面応力を考慮した場合には内部で応力は一定ではなく、複雑に変化している。したがって、応力分布に何らかの平均化を施して、マイクロメカニックスの考え方を導入して、界面エネルギ、微粒子の体積率、形状を考慮した理論を構築する必要があることがわかった。
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