熱応力の焦点化現象の解明が特に最近必要となってきたのは、物体の加熱方法が以前の様に表面からの熱伝達による加熱方法とは著しく異なり、電磁波、レーザー、γ線などのきわめて短時間に、物体全体が一定の温度に衝撃的に加熱されるようになったからである。 例えば、球体が急激に加熱されると熱応力の焦点化現象が生ずる。この様な、球の焦点化の際、球の中心での応力の特異性は0(1/r^3)である。そこで、この焦点化時の円周方向の応力をσ_θ=F_p/r^3と表示すると、このF_pが本研究で導入する応力焦点化強度係数であり、応力の焦点化時の焦点化強度を表す。本研究では、この応力焦点化強度係数を、赤外線を用いた実験により解明しようとするものです。 1.熱応力の焦点化現象の円柱及び球における解析方法の確立 (a)球状介在物が含まれる無限体全体が一様に急激に加熱される事により生ずる熱応力波の焦点化現象を、波線法を用いて解析した。そして、球状介在物の焦点化による中心での特異性の強さを解析し、これを日本機械学会講演論文集に発表した。 (b)直交異方性円柱全体が一様に加熱される事により生ずる熱応力波の焦点化現象及び、電磁弾性円柱全体が加熱される際の焦点化現象を、波線級数法を用いて厳密に解析した。この厳密解での円柱の中心での特異性の強さより応力焦点化強度係数を解析し、その成果を、日本機械学会論文集、及び、JSME Int.J.誌に掲載した。 2.赤外線による応力焦点化現象の検証 透明な球形セラミックスの中心部に導波管を立て、これに超小型AEセンサーを固定し、赤外線ランプにより急激な熱衝撃を加えた。この際中心部で発生する信号波形を検出し、熱応力の焦点化現象を捉え、日本機械学会講演論文集に発表した。
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