形状記憶合金の特性である擬弾性特性及び形状記憶特性に焦点を合わせ、それらの一般熱-力学的負荷条件下での挙動を精密で系統的な実験により詳細に検討した。すなわち、形状記憶合金製薄肉円筒試験片に温度変動/軸力・ねじり複合負荷による種々の熱-力学負荷経路を与え、対応する複雑な変形挙動を計測した。この結果、工学的にもまた、産業応用的にも極めて興味ある多くの熱-力学現象を発見した。例えば、形状記憶合金に多次元的挙動を付与することがき、しかもこの挙動は熱-力学的に履歴依存的である可逆的であるため、この特性を繰り返し再現することができる。このことから、例えば形状記憶合金を2次元あるいは3次元的位置決めシステム要素として採用することができる。すなわち、多数の形状記憶ワイア-を組み合わせなくても、例えばロボットアームに複雑で精密な挙動を付与する可能性のあることが分かった。本研究ではさらに、これらの熱-力学的現象をその基本メカニズムであるマルテンサイト変態/逆変態の微視的観察/解析によりその本質を解明した。最後に、これらの知見を基礎として形状記憶合金の構成方程式を定式化した。この構成方程式は一般的応力・温度条件下における複雑な形状記憶合金の変形および力発生に対する予測性を与えるものであり、形状記憶合金を用いた、所望の機能をもつアクチュエータ、センサー、位置決めシステムなどの具体的設計に極めて有効であると考える。
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