研究概要 |
1.疲労き裂進展速度に関する基礎データ測定 アルミナおよび窒化ケイ素セラミックスについて疲労き裂進展速度に関するデータを応力比と周波数をパラメータとして測定した。これまでの結果から、アルミナは高応力振幅域での周波数依存性が強く、導電性被膜電位差法を用いて1サイクル過程のき裂進展を低速度で観察する際には静疲労効果の考慮が必要であるが、窒化ケイ素は周波数依存性が小さく、本電位差法の実験供試材として適切と考えられた。 2.導電性被膜電位差法の最適条件の把握 導電性物質としてC,Ti,TiC,Ni,Crを選び、先ず各々について適正なスパッタリング条件を決定した。次いで、き裂長さと電気抵抗変化の関係の直線性を調べ、(1)供試材との密着性が良好であること、(2)供試材のき裂開口に伴い被膜も開口すること、の2点において最も優れているNiを最終的に選定した。これらの条件下での測定により、疲労過程における負荷時と除荷時にそれぞれ対応するき裂進展量(μmのオーダ)の測定が可能であることが判明した。 平成7年度に得られた基礎データを基に平成8年度は、Ni導電性被膜電位差法を用い、主に窒化ケイ素の荷重繰り返しの負荷過程および除荷過程におけるき裂進展挙動を負荷条件をパラメータとして波形解析装置により解析する。これらの測定により、セラミックスの疲労き裂進展現象がこれまでに提案されているGrain Bridging Degradation機構とCrack Resisting Reactivating機構のいずれにより生じているかについて判定し得る直接的データが得られると考えられる。
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