研究概要 |
拡張信頼性理論で破損確率の近似値や安全性指標算出のプロセスの再検討を行った.その結果,いずれの変換によっても,変換後の空間における原点から限界状態関数までの最短距離は変換法に依存せず一定になるけれども,変換法に依存して評価空間での危険領域は異なる領域を形成することも確認された。このことは安全性指標が同一でもそれを用いて推測する破損確率近似値は分布の非正規性や相関の強弱によって一定でないことを示唆しており,これは重要な知見と言える. ついで,構造システムの信頼性解析のために,上界と下界を用いた精度のよい予測式を与えるとともに,計算時間の削減をはかった条件付安全性指標の計算アルゴリズムを提案した.この試みにより,限界状態関数の間の相関関係を取り扱った構造システムの高次積事象確率の予測近似式を簡単な形式で記述することに成功した. また,安全性指標の統計的不確定性と時間依存性を考察し,その特性を経済性評価に利用する方法を提案した.このとき,構造システムの破損損失費用だけでなく,設計や施工時の過失に関する罰金費用も加味した設計最適化の規範を示し得た.その結果,構造システムの期待総費用の定式化が,破損損失と過失損失の両者の組み合わせによっては,初期建設費用,破損損失費用,信頼性試験費用,定期保守費用,罰金費用などの各因子の組み合わせが変わることを事例解析に基づいて示した. さらに,分布組み合わせと相関の存在の有無によって限界状態関数の挙動を3次モーメントの関係で簡易的に予測する方法を示した.また,その場合にどのくらい初期の信頼性設計から設計変更を見積もるべきかを推定できる設計支援資料を提供できた.
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